僕と貴方と病と薬。後編














「えー、何ですかぁ、それ」
今まさにノックしようと思っていた扉の向こうから、予想以上に元気な声――誰かに返事をしているような声がして、孔明は手を止めた。
この声の調子からすると、この部屋の主である幻夜はいつものように、子供っぽく頬をぷぅ、と膨らませているに違いない。もうそれなりの年齢なのにいつまで経っても止める気配の無いその所作を、孔明がどうにかして止めさせたいと思っている事を彼は知らないだろう。
部下がああだと、上司たる自分まで疑われてしまうではないか。
「ヒドイだろ?お前の上司ってのはそんなもんだよ。期待した俺達が間違ってた」
陽気な声で応じたのは、レッドだった。先刻の会議の後、この棟――幻夜の居室の有る棟――への立ち入りは一切禁止した筈なのに。
聞く気が無いのならば返事をしなければ良いのだ。むかっとして孔明は小さく舌打ちをする。
「面会禁止どころか、この棟に近付く事も厳禁。しっかり入り口に張り番まで立てる辺り、徹底してるよなー。罹患した、ってより既にお前自身が『新種のウイルス』扱いだぞ、これ」
部屋の中の会話は、孔明に気付く事無くどんどんと進んでいた。
(――好きな事をっ…)
孔明とて、何も本気で先刻のような発言をした訳ではない。実は幹部達の知らぬところで、今密かにBF団内では流感が横行していたのだ。今はまだ部屋付きでない下級の者がその中心であるので、幸い表沙汰にはなっていないのだが。表沙汰になれば人々が恐慌状態に陥るだろう程の人数は既に倒れている。
今までは、彼等に対してそれなりの処置を行なっていれば良かった。
しかし、幻夜が罹患した事によって状況が変わってきた。部屋付きの者とそれ以外の者達とは基本的に生活する場が全く違う。そんな状況下で幻夜が流感に掛かったという事は、徐々にその猛威が留めおく事が出来ずに広がり始めたという事だ。
仮にも、その名を聞けば世界が畏怖の余りに跪く、と云われる十傑集が、うっかりそんなものを患ってみろ。良い物笑いの種ではないか。
しかも事は幹部だけでは収まらない。もし、ビッグファイアに感染ったら。
そう考えるだけで孔明はぞっとするのを禁じえなかった。
どのような手段が一番効果的なのかは解らない。ただ、罹患した者には一番有効だと思われる薬を処方して、隔離する――それが最も得策だろうと考えたのだ。
それの何処が悪い。
「うわっ!酷!!」
笑い声を含んだ幻夜の声が聴覚に突き刺さった。
(…そんな事も知らずにコイツラはっ…!)
ふるふる、と怒りで拳が震えた。震えは手にしていた洗面器に伝播し、表面に細波を起こさせる。微かな水音が廊下にほろり、零れた。
帰ろうかな。咄嗟にそう思ってしまう。
何だかとても入り難い雰囲気だ。
特に――レッドの発言によれば十傑集全員が、先程の会議においての自分の行動を、見事に勘違いしていたらしいから。このまま姿を現せばその勘違いは『真実』として、明日辺りには団内中に広がるだろう。
冗談じゃない。自分はそんなに人が善い訳ではないのだ。
くるり、と踵を返して帰りかけ――だがしかし、孔明は足を止めた。
駄目だ、少なくともレッドをあの部屋から排除せねばならない。放置すれば彼が感染するのも時間の問題だろう。そうすれば、自分が一番恐れた結果が待ち受けている。
「でも、レッド様が羽目板を落っことして出てこられた時には、心臓が引っ繰り返るかと思ってしまいましたよ」
再びノックしようとした手が、幻夜の言葉に再び止まった。
――天井から出入りしてきたのか。
扉の前でがくん、と首を落として孔明は、棟の入り口に立てた張り番に、今日中に他棟と繋がっている屋根裏を凡て塞ぐように云っておこう、と頭の中にメモを取った。
というかそもそも、そんな他から侵入しやすい造りは拙いだろう。
溜息を一つ、そして今度こそ孔明は扉を軽くノックした。
「幻夜、入りますよ」
声を掛け、リプライが来る前に扉を開けると、案の定瞳を丸くした忍者と、熱の所為だろう、顔を赤くしてベッドから半身を起こしていた幻夜がこれまたレッドと同じ様に――まるで兄弟のようにそっくりな表情を浮かべてこちらを凝視していた。
二人の心中を渦巻く言葉は、何も読心術が出来なくても、テレパシストで無くとも、顔に書いてあるからすぐに解る。
『ヤバイ』。もしくは『拙い』。
孔明は、氷のナイフのようだと称される事の多い眼差しをキリ、と二人に向けて放つと、足音をわざと立てて部屋に入っていった。
「よう、孔明」
「…私の空耳でしょうかね。いる筈のない方の声がしたような気がします」
ひょいと片手を上げて挨拶してくるレッドを軽く無視するが、良く考えなくてもそんな事が通用するなら――十傑集なんてやっている訳ない。
「可愛くない物の云い方すんなよ」
「可愛くなくて結構です!レッド殿!何をなさってるんですか!」
横を素通りしようと試みるも、がっしと肩を掴まれれば無視するのも大人気ない。冷静に、冷静に対処をしろ。自分にそう云い聞かせられたのも一瞬の間。レッドのおどけた言葉に我慢が切れた。
肩をそびやかして自由を取り戻すと、がうっ!と噛みつかん勢いで思わずそう怒鳴ってしまう。
しかし相手は飄々としたもの。怒鳴られた事など意にも介さぬようにシニカルな笑みを口元に浮かばせ、『んー』と顎に指を押し当て、首を傾げて見せる。
その所作が、兎も角腹立たしい。
「見舞い?みたいな?」
「黙らっしゃい!」
枕頭台にがしょん!と乱暴に洗面器を置いて、半疑問形でカワイ子ぶるレッドに詰め寄るが――彼のニヤニヤ笑いは一向にナリを潜める素振りはなかった。
寧ろ増長するようにその笑みは大きくなって――。
「決まり悪いのは解るけど、照れ隠しに怒鳴らなくても良いだろうが、なぁ?幻夜?」
「何が照れ隠しですかっ!」
とんでもない方向へと進もうとする話を無理矢理軌道修正させるべく、取り敢えずレッドの胸倉を掴んでおく。
「貴方もよくよく人の話を訊かない人ですねぇっ…私があれ程口を酸っぱくして、此処に立ち入るのは禁止だと申し上げた筈ですが?ああ、それともそこに付いているのは耳ではなく、餃子か何かなんですかっ!?」
「うっわ、古」
「しかも!人が折角用意して差し上げたマスクも無しとは、一体どういう了見なんですか!!」
視界の端で幻夜がおろおろ、どうしたら良いのかというようにおたついているのが解るが、取り敢えず見ない事にした。
そんなものに負けて、手を引けば――またぞろ同じ事を仕出かすのだから、この人達は。
云える時にガツン、と云っておかないと。
「ったく、病人の前だぞ、吼えるなって。解った、私が悪かった」
詰め寄った額をつん、と突付かれて、何だか自分が妙に大人気ない事をしているような情けない気分になってしまう。
宥めるようにぽふぽふ肩を叩かれ、仕方なく孔明はレッドから手を離した。本当はもっと云いたい事があったのだけれど。
「…必ず、戻られる前にうがいと手洗い、済ませて下さいね?それと、もし具合が悪くなったなら絶対に無理して出ないで下さい」
「りょーかい」
そう最後に云い含め、取り敢えずその背中をぐいぐいと押してやる。早く出ていけ、という無言の要求だ。
「じゃーな、幻夜。お大事にー」
「有難う御座います、レッド様」
振り返りざま、幻夜に向かって派手にウインクをかましたレッドに、幻夜が礼儀正しくぺこんとベッドの上から頭を下げる。
そのやり取りに、何となく『上司と部下』を超えたものを見たような気がして少しだけ心がほんのりと温かくなるが――それも束の間。
「おい、あんまり怒ってやるなよ?」
「貴方の知った事では、あ・り・ま・せ・ん!」
自分が部下に対してどういう態度を取ろうが、自分の勝手だ。扉の際で耳元に囁いてきたレッドを、文字通り一蹴して部屋から排除し、孔明は音高く扉を閉めた。

「全く…ほんっとうに…人の話を訊かないにも程があるっ…」
抑えようと思っても抑えきれない文句をぶつくさ零しながらきゅ、と踵を返すと、幻夜が怯えたような眼でこちらの様子を伺っていた。
『怒られる』。そう思っている事がバレバレの気配に、余計に腹が立つ。怒られる、と予測して縮こまるのは、自分が怒られるような事をしているという自覚があるからだろう。
という事は、どのラインまでが大丈夫で何処からが大丈夫でないかは認識出来ている、という事。
ならば何故、わざわざ怒られるような事をするのだ。
――普段なら、そういう事も含めて一頻り説教するのだが、しかしさすがに病人相手では――別にレッドに云われたからでは、断じて無い――そうもいかない。
いつまでもぐずぐずと半身を起こしたままの幻夜に『横になっていろ』と云い置いて、自分もベッドの方へと赴いた。
枕頭台の洗面器周辺は、少し濡れていた。恐らく先刻、勢い良く置いた所為だろう。
それをさっと拭き取り、脇に放り出してあったぬるい濡れタオルをその中に浸す。
幻夜は暫し孔明をじっと見つめていたようだったが、やがて大人しく言に従ったようだった。上掛け布団を被って眼を閉じている――と、その瞼がヒクヒクと引き連れるように僅かに、動いていた。
(――泣いて、いるのか?)
まるで泣くのを必死に堪えているようにも見える。だが、何故。熱を出すと人は感情のコントロールが効かなくなると云うが、その所為か?
それとも、先刻の『怒られた』のがそんなにショックだったのか?
――恐らく、否。
幻夜は、思い出してしまっているのだろう。彼がまだ幸せな家庭に身を置いていた時の事を。
こんな風に熱を出した幻夜を看病したのは母親だったのだろうか。あの忙しかったであろう父ではない筈。ひょっとして妹?それとも他の誰か。
多分夜通し傍に付いてくれて、タオルを替えたり、ひょっとして林檎を擦ってくれたり――したのだろう。
もう、永遠に手が届かないその想い出は、今尚彼をこうして苦しめる。
ただ、純粋に『可哀想』だと思った。
想い出というのは基本的に美化されていて、懐かしんだりする為にある物の筈。なのに、それが彼にとっては――。
忘れてしまえば良いのに、とも思う。だが、『想い出』は彼自身に残された最後の遺産。
苦しい、でもそれしか無い。
それがどれほど辛いのか、自分には解らないけれど。
「……」
きゅ、と絞ったタオルを解き、孔明は再び幻夜を見返る。
自分の見ている前で、固く閉じられた目頭にほんの少し、ぷくりと涙が浮いてきた。
「――…っ」
情けない。違う、見ていたくない。何故?だって、嫌だ。何が?
哀しみに囚われている人間は自分に、忘れていたい過去を思い出させるから――。
べちょ。
間の抜けた、重くくぐもった音がして、幻夜の顔が隠れる。
「あ」
「っ!ぐはっ!」
一瞬、びくりっ!と幻夜の身体が大きく跳ねた。一度勢いがつくともう止まらないらしい、顔に乗っかったタオルを必死に引っ剥がそうとしながら、まるで陸に上げられた魚のようにびくびくと痙攣している。
「すみません、幻夜。大丈夫ですか?」
さすがに申し訳無く思いながら殺人未遂を謝り、タオルを外してやると下から完全に泣きが入っている――だがその理由は先刻とは違うだろう――幻夜が顔を出した。
「孔明様、危ないです!っていうか、死にますってば!!」
「――失礼。ついうっかり手が滑りました」
「いや、ついうっかりって…」
しれっと詫びて見せれば幻夜は不信感の塊のような視線を送ってくるが、もう湿っぽさはない。その事に妙な安堵感を覚えつつ今度こそ、正しい位置にタオルを置いてやった。
まだ小さな声でぶつぶつと文句を垂れているけれど。
「うっかりで命を奪われかけたら堪ったもんじゃないですよぉ」
「そもそも貴方が風邪なんてひかなければ、こんな事にもならなかったんですけどねぇ?」
珍しく謝ったのに、という気持ちがつい、云うつもりの無かった言葉を吐かせる。
案の定、幻夜は傷付いた顔をした。
「自己管理がなっていない、証拠ですよ」
けれど、勢いのついた言葉は止められなくて、容赦無い舌鋒が放たれてしまう。
「…済みません」
しゅん、とした声。主人に怒られた犬が耳を垂れさせているようだ。ちくちくと罪悪感が心臓を突っついた。
何も孔明とて、わざと幻夜が風邪を引いたとは思わない。誰だって普通なら、健康でいたいと思うだろう。
それに、幻夜は孔明付きで、今回のこの流感に関しては見知っていたから、健康状態には人一倍気を配っていた筈だ。
それが解らない程、自分は無能ではない。
「ごめんなさい…」
幻夜の声が潤んだ。はっとして見れば――必死に口唇を噛み締め、堪えようとはしているだろうが瞳が赤く色づき始めている。掛け布を掴んだ指は白くなり、見ている前でどんどんと顔が俯かれてゆく。
仕方ない事を、済んだ事をいつまでも愚痴てどうするのだ。
素直に自分の非を認め、自戒の為に小さく溜息をつくと、孔明はぎっ…と幻夜のベッドの端に腰を下ろした。
「済まないと思うのなら、早く治しなさい。…貴方がいない所為で、こちらは大弱りなんですから」
「え…?」
自分がほんの少し優しくするだけで、こんなにも敏感に反応する、存在。一体どうしてやれば良いのだろうといつも思う。
ぱっと顔を上げた幻夜の顔は、笑顔とも驚きとも付かない色を浮かべていた。
「普段から貴方が独占している仕事。貴方が整理中の書類の場所。他の者では勝手が解らないんですよ」
それは、本当の事だった。そういう事柄は凡て下の者に一任していた(序でに云うのならば、それらは凡て幻夜が独り占めしていた)ので、孔明では全く何が何だか解らない。
お陰で今日は、策士執務室は麻痺状態に陥り、書類の捜索や資料探索などで殆どの者が時間を費やしたのだから。
「孔明様…」
「――早く、治しなさい」
良いですね?と念を押すと、幻夜が心底嬉しそうに破顔した。見ているこちらまで笑みを誘われるような、顔。
と、そこにコンコンとノックの音が割り込む。
「?」
「ああ、来ましたか」
不思議そうな顔をした幻夜を置いて、孔明は立ち上がった。此処に来る前に厨房に立ち寄って頼んだ物が、来たのだろう。
「失礼します、孔明様。仰っていた物をお持ちしました」
「ご苦労でした。有難う」
扉を開け、そこに立っていた厨房C級から小さな、一人用の土鍋を受け取る。
くつくつと上がる湯気で、蓋が微かに上下していた。
「孔明様…何ですか?それ」
「これは、アジア風のリゾットで『粥』という物です」
訝しむ幻夜の前で蓋を開けてやると、ふわんと白い湯気が立ち、少し香ばしい、何とも云えない良い匂いが部屋一杯に充満した。
「うわぁ…良い匂いですねぇ…」
うっとり、と土鍋の中を覗き込む幻夜を制し、枕頭台にお盆ごとそれと蓮華と水の入ったグラスとを置くと、無邪気な顔をしている幻夜に向かって――出来るだけ説教口調にならないように気を付けながら、説明する。
「風邪の時には温かい物を食べて、薬を飲んで、よく眠るのが一番ですよ」
云いながら、ああそうだ、とポケットを探り、中から風邪薬を取り出した。これで『風邪時の三種の神器』が揃った訳だ。
「これで掬うんですか?」
興味津々で早速蓮華を手に取り、大きな口を開けて幻夜がぱっくりと食らいついた。
あ、と思う間も無い。
「――っ!!熱いっ!熱いですよっ!孔明様!!舌、火傷しましたぁっ!」
「熱いに決まっているでしょう。それだけ湯気がたってるんですから…もう」
ひょい、と蓮華を取り上げ、一匙分だけ粥を掬う。これだけふつふつと煮立っていれば、普通気を付けそうなものなのだが。
まぁそれが、幻夜が幻夜たる所以なのだろう。
「手間の掛かる人ですねぇ」
自分は一度も子供を持った事はないけれど、きっと子に接するというのはこういう気分なのだろう。
甘やかしてやりたいような、けれど突き放してやりたいような、擽ったくてどうしようもない感情。
口を窄めてふー、と吹いてやり、
「ほら」
蓮華を差し出す。
「ちゃんと冷まして食べなさい。子供じゃないんですから」
差し出された蓮華を幻夜がまじまじと見つめた。それに向かって早く取れ、という意味を込めて『ん』と蓮華を突き出してやると
「っ!」
ぱくっと。
何を勘違いしたのか幻夜は、蓮華を受け取らずにそのままぱくついてきた。
思わず凍り付いてしまう孔明の前で彼はほむほむと冷まされた粥を租借し、そしてにっこりと笑う。
「美味しいですv」
その笑顔で、漸く硬直が解けた。
「っ!誰が『食べさせてやる』と云ったーっ!!」

がっしょん!という非常に物騒な音が幻夜の部屋から響いた頃。
「仲がよろしー事で」
しっかりと居残って廊下で立ち聞きしていたレッドがにやり、と笑った事は、誰も知らない。


◇◆◇


ある意味お約束と云おうか何なのか。
翌日、予防していたにも関わらずしっかりと空気感染してしまっていた孔明と、一晩眠っただけでばっちり全快してしまっている幻夜が、策士私室で密かな攻防を繰り広げていた。
「孔明様、はい、あーんv」
昨日の状況とまるで逆(一部捏造)の格好で、幻夜が蓮華を片手に何とか孔明の口を開かせようとしている。
「するかっ!ぼけ!!」
良いから、ぶり返さない内にさっさと帰れ、と百回くらい云ったのだが、全然訊いてもらっていないようだ。
暖簾に腕押し、糠に釘。馬の耳に念仏。頭が熱で煮立っているところにこれでは、堪らない。
くらくらするのを何とか我慢し、渾身の力を込めて投げた氷嚢はしかしあっさりと避けられてしまう。あまつさえその隙に更に距離が詰められた。
「風邪の時くらい、甘えて下さいッてば!私もこれで治ったんですから!!ほら、あーん!」
「治るかーっ!!」
にじり寄る幻夜に基本的な突込みをばしっ!とかまして、孔明が叫んだ。

「――あの調子じゃゆっくり休めないだろうから…」
「明日も、欠席だろうなぁ、多分」
扉の外で、ノックしようかどうかと躊躇していたお見舞い組(セルバンテスとレッド)が、クスっと苦笑いして仲良く肩を竦めた。
今日のところは退散するとしようか。お互いの眼がそう云っている。
多分此処で顔を出せば、またぞろあの策士はきーきーと喚くだろうから。
「ま、せいぜい」
「お大事に」
去ってゆく二人の背後の怒鳴り声は、まだまだ当分止みそうにも無かった。













■おわり■






やっちゃった感の否めない風邪引き後編。狙った所はほのぼの偽親子だったのに蓋を開ければただのラブラブ馬鹿ップルにまで成り下がりました。お大事に、という一言は私の脳に向けて。
レッドが天井から出入りするのは忍者だからです。忍者だからなんです。


2003/05/30






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